新しいワクチンについてもう少し詳しく・・・

まず最初に大事なことを・・ 

mRNAワクチンはヒトの遺伝子を改変する遺伝子操作とは全く違います。受けるか受けないかは正しい知識に基づいて判断しましょう!

従来のワクチン

新型コロナウイルスのワクチンは世界中で競って開発され、極めて短期間のうちにヒトに接種できるところまで来ました。ここまでスピードアップできたのは、新しい技術によるワクチンの作り方にも理由があります。まず、従来のワクチンがどのように作られるか大雑把に解説します。

生ワクチン(上図の丸数字1→2→3)

(1)まず、病気の原因となるウイルスを同定して、培養して増やします。ウイルスを培養するのは結構大変で、ウイルスを発見してから培養方法を研究して見つけるまでに、かなりの時間を要します。

(2)ウイスルを培養できるようになったら、培養を重ねながら様々な方法で毒性を弱めたウイルス株を作ります。

(3)人体に大きな害が出ない程度まで弱毒化できたら、それを接種すると病気を発病せずに(あるいは極めて軽い症状だけで)免疫を得ることが出来ます。

不活化ワクチン(上図の丸数字1→4→5)

(1)ウイルスを同定、培養するのは生ワクチンと同じ。

(4)培養したウイルスを壊して免疫細胞が認識できるタンパク(抗原)だけを抽出します。

(5)抗原を精製して注射すると、病気を発病する危険はゼロで免疫だけを得ることが出来ます。

遺伝子ワクチンはどこが違う?

現在接種され始めた新型コロナウイルスワクチンの主流はmRNAワクチンとウイルスベクターワクチンです。これらは遺伝子ワクチンと呼ばれることもあるとおり、病原体やその一部のタンパク(抗原)を摂取するのではなく、抗原の設計図となっている遺伝子を接種するものです。

まずは基礎知識、遺伝子って?

遺伝子は生命の設計図とも言えるものです。人の体の設計図は全て、細胞の中にある細胞核の染色体と呼ばれるところに、ゲノム遺伝子として格納されています。ヒトのゲノム遺伝子はデオキシリボ核酸(DNA)で出来ており、次のような手順で体に必要なタンパク質作り出します。

(A)ゲノムDNAから作りたいタンパク質の部分だけをコピーしてRNA(リボ核酸)を作る。これを転写と言います。

(B)RNAは細胞核から出て細胞質にある小胞体に移動する。小胞体はタンパク質を製造する工場で、RNAはゲノムから設計図を小胞体に伝えるメッセンジャーの役目を担っているので、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる。

(C)小胞体でmRNAの情報に従って体に必要なタンパク質が合成される。合成された蛋白質は、必要に応じて細胞内で使われたり、細胞外に放出されて使われたりする。

(D)メッセンジャーの役目を終えたRNAはすぐに分解される。(いつまでもRNAが残って必要以上の蛋白質を作ってしまうと、体に害をなす恐れがあるため)

mRNAワクチン(上図の丸数字1→2→3→4)

(1)ウイルスを同定する。培養技術は不要。

(2)発見されたウイルスの遺伝子を解析して、抗原(新型コロナウイルスの場合はスパイク蛋白)の設計図となる遺伝子を見つける。

(3)スパイク蛋白の設計図となるRNAを合成する。

(4)RNAを保護するナノ脂質膜に包んでmRNAとして注射する。

ウイルスベクターワクチン(RNAウイルスを使った場合)(上図の丸数字1→2→3→5)

(1)~(3)はmRNAワクチンと同じ。

(5)別の安全なウイルスにRNAを組み込んで注射する。このウイルスが運び屋(ベクター)となって、細胞内に入り込んで、細胞内でmRNAとして働く。

アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでは、ヒトに病原性がなくヒトの細胞内で増殖もしないチンパンジーアデノウイルスをベクターとして使っていますが、これはDNAウイルスを利用したDNAウイルスワクチンですので、少し違います。

遺伝子ワクチンはどのように作用するの?

合成されたスパイク蛋白のmRNAをそのまま注射しても、細胞内には届かずスパイク蛋白は合成されません。また、生体内にはmRNAは速やかに分解される仕組みがあります。(上図の丸数字1)

mRNAをナノ脂質膜で包んで保護することで、mRNAが分解されずに細胞内に届きます。(上図の丸数字2)

細胞内に届いたmRNAを設計図としてスパイク蛋白が合成されます。(上図の丸数字3)

合成されたスパイク蛋白は細胞外に放出され、免疫細胞がそれを抗原と認識して獲得免疫が成立します。(上図の丸数字4)

仕事を終えたスパイク蛋白mRNAはすみやかに分解され、人体内に長くとどまることはないと考えられています。

RNAではなくDNAを使ったワクチン

新柄コロナウイルスのゲノム遺伝子はRNAで出来ているので、スパイク蛋白の設計図となっているRNAからそれに対応するDNAを作り出す。これを逆転写と言います。(上図の丸数字5)

作られたDNAを細胞核に入れる。入れる方法はいろんな技術があってややこしいですが、一番簡単なのは別のDNAウイルスに組み込んで、ウイルスを運び屋として利用するものです。アストラゼネカのワクチンはこの方法です。

細胞核に入ったDNAはRNAに転写される。(上図の丸数字6)

転写されたRNAはmRNAとして細胞質に移動し、このmRNAを元にスパイク蛋白が合成される。以下はmRNAワクチンの場合と同様。(上図の丸数字3~4)

DNAはRNAより安定しているので、ワクチンの保管や運搬が容易になるメリットがあります。ただし、下にも書いたように体内でも長く残ることが予想され、ワクチンの効果が長く残るメリットと同時に長期間残ることによるデメリットも考えられます。

遺伝子ワクチンと遺伝子操作の違い

ネット上では遺伝子ワクチンに対して不安を感じる意見が多く見受けられます。中には遺伝子操作と混同して不安を煽る書き込みも見られますが、遺伝子ワクチンと遺伝子操作は全く別物です。

たとえば病気の治療などの目的で、ヒトのゲノム遺伝子を改変してその影響が長く続く(場合によてては子孫に引き継がれる)ようにするのが遺伝子操作です。これに対して、遺伝子ワクチンは短期間だけ作用したらそれ以上は体内に残らないのが基本です。

上でも述べましたが、生体内にはRNAをすぐに分解する仕組みが備わっているため、ワクチンとして注射されたmRNAは体内に長くは残らず、これが人の遺伝子に影響する可能性はまずありません。

DNAワクチンはどうでしょうか。RNAと違ってDNAは簡単には分解されないようになっています。ヒトの設計図であるゲノム遺伝子が簡単に分解されてしまっては困りますよね。DNAをワクチンとして使った場合、細胞核に取り込まれて長く残る可能性は否定できません。(少なくとも私はそう思っています)

DNAワクチンが長く残った場合、延々と抗原タンパクを作り続ける危険や、そのDNAがゲノム遺伝子に取り込まれてヒトの遺伝子が書き換えられてしまう危険があるかも知れません。だからmRNAワクチンと比較してより慎重な安全面の検証が必要と考えられます。

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    • 多代 友紀 タシロ トモユキ

    72歳になろうとする、岐阜県揖斐郡大野町在住の開業医です。mRNAとウィルスベクターワクチンと新型コロナワクチンについての分かりやすい話、とても勉強になりました。アストラゼネカのMRさんから先生のブログ、ファイルを紹介していただきました。それと自転車の旅、リアリティあり、まるで自分が自転車に乗っているかのごとくです。本当に楽しく拝見させていただきました。
     先生のブログ及びmRNAとウィルスベクターワクチンと新型コロナワクチンについての2つのファイル、当方の多くの仲間(大野町内開業医、漢方の仲間、中1に対するたばこ啓発活動の医師、薬剤師等、コロナに関わる保健師含めた役場の方々など)に先生のこの貴重な資料を案内したいと思いますが、良かったでしょうか。
     簡単な文面(例えば、OK、駄目)で結構ですので、連絡をお願いします。
     難しい話を目線を下げ、公開していただいています広い気持ちに感謝します。先生のご健勝とますますのご発展をお祈り申し上げます。
    ありがとうございました。

    • 多代 友紀 タシロ トモユキ :
      このコメントは管理者の承認を待っています。
      72歳になろうとする、岐阜県揖斐郡大野町在住の開業医です。mRNAとウィルスベクターワクチンと新型コロナワクチンについての分かりやすい話、とても勉強になりました。アストラゼネカのMRさんから先生のブログ、ファイルを紹介していただきました。それと自転車の旅、リアリティあり、まるで自分が自転車に乗っているかのごとくです。本当に楽しく拝見させていただきました。
       先生のブログ及びmRNAとウィルスベクターワクチンと新型コロナワクチンについての2つのファイル、当方の多くの仲間(大野町内開業医、漢方の仲間、中1に対するたばこ啓発活動の医師、薬剤師等、コロナに関わる保健師含めた役場の方々など)に先生のこの貴重な資料を案内したいと思いますが、良かったでしょうか。
       簡単な文面(例えば、OK、駄目)で結構ですので、連絡をお願いします。
       難しい話を目線を下げ、公開していただいています広い気持ちに感謝します。先生のご健勝とますますのご発展をお祈り申し上げます。
      ありがとうございました。

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