コロナ3年

新型コロナ患者数の推移

久しぶりの更新です

暫く更新が出来ていませんでした。2022年初めから当院でも発熱外来が本格化し、日々疲れ切って更新の時間がとれませんでした。ようやく落ち着いてきて「終わり」が見え始めましたので、この機会にいち開業医からみたコロナとの闘いを振り返ってみたいと思います。

まず、かぎもとクリニックは元々糖尿病を中心とする慢性疾患の患者さんが主で、風邪やインフルエンザの人はあまり来ないクリニックでした。もちろん、かかりつけの方だけで無く初診の患者さんも、必要があれば検査や治療を行ってきましたが、かかりつけの患者さんでも「風邪をひいたけど、ここは忙しそうやから、よそで診てもらいました」という方が少なくありません。

そんな日常の診療と並行しての発熱外来であった(まだ終わってはいませんが)ことを、最初に言い訳しておきます。

2019年12月初旬に中国の武漢市で第1例目の感染者が報告された新型コロナウイルスは、2020年1月16日に日本国内で最初の感染者が確認され、長い戦いが始まりました。まだ収束したとは言えませんが、現在の第8波もほぼ落ち着きつつあり、5月からは法律上の扱いも変わることになっています。

2020年1月から2023年2月までの、1ヶ月ごとの京都府の感染者数(緑の折れ線グラフ、右目盛り)と、かぎもとクリニックでの新型コロナの検査数(青棒グラフ、左目盛り)および陽性者数(オレンジ棒グラフ、左目盛り))を下の図に示します。第1波~第7波の致死率は神奈川県の統計を引用しました。

傍観するしかなかった第1波・第2波

第1波、第2波の感染者数はその後の波と比較すると多くはありませんでしたが、未知のウイルスによるパンデミック、治療法もはっきりせず重症化率・致死率が高い(第1波の致死率5.4~6.4%)というニュースを聞きながら多くの方が行動を自粛して家に閉じこもって居たと思います。

もちろん、我々のような市中の開業医に出来ることは何も無く、ただただ目の前に発熱の患者さんが来ないように、自分達が感染しないようにと祈るばかりでした。そんな中で医者としてわずかでも役に立ちたいと、錯綜氾濫する情報をできるだけ正確にかつ分かりやすく皆さんにお伝えするためにオリーブ53号(2020年4月20日発行)の記事にまとめたところ、クリニックの枠をはるかに超えて全国に拡散して頂きました。

この時期は様々な会議や研究会・学会も中止になり、日々の診療も急がなくてよいものは先送りに。結果的に時間に余裕が出来て、こんなことを言うと叱られそうですが、2006年の開業以来はじめてのんびり骨休めさせてもらった数ヶ月でした。余談ですが、空いた時間に一人で運動をしておなかの脂肪を減らすことも出来ました。この話は2020年7月15日発行のオリーブ54号「脱・メタボ!大作戦」をご覧下さい。

第3波から闘いに参加

「冬になると第3波がくる、そして季節性インフルエンザと同時に流行すると大変なことになる」との警告が発せられ、その対策として出来るだけ多くの医療機関で発熱外来を開設して欲しいとの要請があり、かぎもとクリニックも10月末に「新型コロナ診療・検査医療機関」の指定を受け、コロナとの闘いの最前線に参加しました。2020年12月に始まった第3波ではかかりつけの患者さんを中心にポツポツと新型コロナの検査を行いましたが陽性者はまだ少数で、この冬は心配されたインフルエンザの流行もありませんでした。しかしこの頃はまだワクチン接種も受けておらず、致死率は第1波より下がったとは言え全年齢層合計でまだ1.54%あり、戦々恐々としながらウイルスに負けないように気合いで(?)診療にあたりました。

第4波はワクチン接種と同時進行

大きな混乱もなく第3波が終わったと思ったら、切れ間もなく第4波が始まり全国で患者数が急増、医療ひっ迫が大問題となりました。2021年4月末からかぎもとクリニックでもワクチン接種が始まりましたが、第4波のまっただ中です。できるだけ大勢の人に一日も早くワクチンを打たないといけない、でもワクチン接種で密になって感染を拡大することは避けねば・・・

重圧の中、時間を切り分けながら発熱外来とワクチン接種の同時進行でした。6月に感染が少し落ち着きかけたと思ったら、7月から変異株であるデルタ株が広がり、第4波が終わらぬうちに第5波に突入、心身ともに休まらない日々が続きました。そんな中でもワクチン接種はスタッフ全員の協力もあって、多いときは1週間に250回以上、合計で2000回以上におよび、希望者ほぼ全員を9月までに打ち終えることが出来ました。

圧倒的に陽性患者数が増えた第6・第7波

2021年の秋は穏やかな状況が続きましたが、これで終わりにはならず、新たな変異株「オミクロン株」出現のニュース。何とか広がらないで欲しいという願いも空しく、2022年の正月明けから発熱外来の患者さんが激増、むしろここからが、かぎもとクリニック発熱外来の本番でした。多いときは1日に10名以上抗原検査やPCR検査を行い、全員陽性の日もありました。

もっと多くの患者さんを診ている所もいっぱいあるので、「我々も頑張らなければ!」と思いながらも、糖尿病をはじめとする慢性疾患の患者さんを数多く受け持っている中ではこれが限界で、かかりつけ以外の発熱患者さんは断らざるを得ない日も少なくありませんでした。

デルタ株からオミクロン株BA1.2、続いてBA5と新たな変異株が出る度に感染者数は増えましたが、反対に重症化率は間違いなく低下しています。全年齢層を合計した致死率は当初の6%前後から、デルタ株が中心の第5波では0.41%、BA5が中心となった第7波では0.09%に下がりました。特に重症化しやすい超高齢者をみても、90歳以上の致死率はデルタ株のときは15.7%と高かったのが、BA1.2では4.8%、BA5では2.5%と確実に低下しています。

2017年~2020年の統計によると90歳以上の方が季節性インフルエンザにかかった場合の致死率は3.06%で、新型コロナより高いのです。率が低くても感染者の総数が多いと医療や社会に与えるインパクトは大きくなるので油断は禁物ですが、個人にとって新型コロナは脅威では無くなりつつあります。

インフルエンザと同時流行の第8波

行動制限の緩和に伴って2022年11月頃から再び感染者数が増え、この冬は3年ぶりにインフルエンザの流行もあり1月は結構大変でしたが、2月中旬から明らかにコロナ感染は減っており、本当にコロナ禍の終わりが見えてきた気がします。新型コロナがなくなるわけではありませんが、個人にとっても社会にとっても脅威ではなくなる日は近いでしょう。

法定感染症と新型コロナ

感染症法では、様々な感染症は感染力及び罹患した場合の重篤性等を総合的に判断して1~5類感染症に分類され、講じることが出来る措置も法で決められています。感染症法で決められていない感染症については、必要があれば指定感染症として、具体的な感染症名や講ずる措置を個別に政令で指定することになっており、新型コロナウイルスは最初この規定にもとづいて指定感染症に指定され、令和3年2月の法改正により新型インフルエンザ等感染症に変更されました。

現在新型コロナウイルスは法定感染症の2類相当として強力な措置が講じられていますが、5月8日以降は5類相当に変更されて、措置も軽くなる予定です。

関連記事

  1. 新型コロナウイルス~情報の氾濫に思うこと(2)

  2. 糖尿病と新型コロナウイルス感染の重症化リスク

  3. PCR検査を有効活用するためには

  4. 免疫とワクチンのはなし(2)

  5. ワクチン開発の展望(2)

  6. 最近のコロナウイルス感染者増加について

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。