糖尿病と新型コロナウイルス感染の重症化リスク

7月以降拡大を続ける新型コロナウイルス感染について、昨日日本感染症学会では「日本は第2波の真っただ中にいる」と論じられました。第2波と呼ぶべきかどうかは様々な意見があるかも知れませんが、少なくともPCR検査陽性者の数は4月~5月の緊急事態宣言の時期よりはるかに多いことは事実です。検査陽性者を全て患者とすべきかどうかは議論がわかれますので、ここでは「陽性者」としておきます。

全国的に見ると陽性者数の増加率は低下傾向のように見えますが、大阪では重症者が急増している、人口10万人当たりの感染者数が飛びぬけて多い沖縄県では県が確保しているコロナウイルス患者用病床365床を超える入院患者があるなど、地域によっては医療資源がひっ迫する事態に陥っており、危機感を持って抑え込まなければならない状況であることは明らかです。

さて新型コロナウイルス感染が重症化する危険因子として、当初から糖尿病が挙げられてきました。私のクリニックには来られる糖尿病の患者さんにも、「自分は糖尿病だから感染したら重症化して死んでしまう」と悲観される方が少なくありません。

糖尿病があると免疫力が低下することは昔からよく知られており、新型コロナウイルスについてもより注意が必要であることは間違いありませんが、実は本当に危険なのは糖尿病のコントロールが悪い患者さんなのです。

普段から適切な治療を続けて良好なコントロールを保っている糖尿病患者さんは、コントロール不良の患者さんに比較しすると免疫力の低下は軽度であり、新型コロナウイルスに感染した際の重症化率や死亡率も低いと考えられます。

中国からに発表された論文(Association of Blood Glucose Control and Outcomes in Patients with COVID-19 and Pre-existing Type 2 Diabetes、Cell Metabolism Clinical and Translational Report| Volume 31, ISSUE 6, P1068-1077.e3) から一部を抜粋して紹介します。(記事中の図はこの論文から引用)

  • 元々糖尿病があって新型コロナウイルスに感染した患者は糖尿病がない人と比較して死亡率が高い(糖尿病患者7.8%、非糖尿病患者2.7%)

しかし、血糖コントロールが良好だった群282名(血糖の中央値115mg/dL、HbA1cの中央値7.3%)と不良だった群528名を比較(血糖の中央値196mg/dL、HbA1cの中央値8.1%)を比較したところ

  • 血糖コントロール良好群では重症化の指標となるリンパ球減少、白血球増加、好中球増加、炎症の指標となるCRP上昇、肝臓障害の指標であるAST上昇、血栓形成の指標であるD-ダイマー上昇、免疫暴走の指標となるIL-6上昇などの項目が軽度
  • 血糖コントロール良好群では、低酸素血症(SPO2 95%未満)に陥る人が少なく、酸素吸入を要した人や人工呼吸を要した人も少ない
  • 入院中の死亡率は血糖コントロール良好群1.1%に対し不良群11.0%と、良好群では圧倒的に低い(補正後のハザード比0.14、95%信頼区間0.03~0.60)

この研究もコロナウイルス感染拡大局面のドタバタの中で事後に解析されたもので調査には限界がありますが、血糖コントロール良好の人は血糖コントロール不良の人ほど怖がらなくて良いというのは、従来多くの専門医が実感してきた経験則ともよく合致しています。

糖尿病だからと一律に怖がるのではなく、リスクを減らすために、普段からしっかり糖尿病の治療を続けておくことが大切です。

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