「一切の交通機関を使わず人力だけで300名山を踏破」といえば田中陽希さんですね。とてもそんな真似は出来ませんが、せめて交通機関を使わず人力だけで頂を目指してみよう! というわけで、お盆に自転車と徒歩だけで愛宕山に登ってみました。
はじめに、愛宕山について
周りを山に囲まれ自然に恵まれた京都。古くから山城の国と呼ばれているとおり、京都には多くの山々があります。京都一周トレイル、比叡山、愛宕山など京都近郊の山道を歩くと、遠くからわざわざ京都の山を歩きに来る観光客で賑わっており、コロナウイルス感染が拡大するまでは外国人も珍しくありませんでした。
「山城国」と名づけたのは平安京を作った桓武天皇ですが、それ以前は「山代国」「山背国」と呼ばれていました。このように山のイメージが濃い京都ですが、実は高い山がありません。全国の都道府県で標高1000m以上の山がないのは、京都府と千葉県、沖縄県の3つだけだそうです。ちなみに千葉県の最高峰は南房総市にある愛宕山(あたごやま、標高408.2m)、沖縄県の最高峰はやんばる国立公園内にある与那覇岳(よなはだけ、標高503m)です。
千葉県の最高峰が愛宕山というのに、京都人としてはなんとなく親しみがわきますね。調べたかぎりで愛宕山という名前の山は、東北地方に32峰、関東地方に27峰、中部地方に13峰、近畿地方に24峰、九州地方に13峰、九州地方に18峰、合計すると日本中に127もの愛宕山があります。
このうち本家本元は愛宕神社の総本山がある京都の愛宕山(標高924m)だと信じていますが、悔しいことに標高では長野県軽井沢町にある愛宕山(あたごやま、標高1174m)がナンバーワンです。もっとも軽井沢の愛宕山は、町の標高が1000m前後もあるため山としては目立たず、浅間山や八ヶ岳などに見下ろされている小高い丘に過ぎませんので、存在感では京都の愛宕山が圧勝です!
京都の愛宕山の山頂には愛宕神社があります。ここは全国900以上ある愛宕神社の総本社で、火伏せの神として有名です。京都では「3歳までに愛宕神社にお参りするとその子は一生火事に遭わない」という言い伝えがあり、小さい子供を連れた家族連れの登山もよく見られます。ほとんどは途中からお父さんがおんぶする羽目になっていますが・・・
また、毎年7月31日には千日詣という行事があります。正式には千日通夜祭(せんにちつうやさい)と呼ばれ、7月31日夜から8月1日早朝にかけて参拝すると千日参拝しただけの御利益があるとされています。7月31日は深夜まで嵐山駅から登山口の清滝までバスが運行され、清滝から山頂の愛宕神社まで約4kmの登山道(表参道)には一晩中明かりが灯されます。例年は一晩で数万人の参拝者があるそうですが、残念ながら今年の千日詣はコロナウイルス感染拡大の影響で中止となりました。
愛宕山は信仰だけでなく、登山の対象としても京都市民に親しまれており、京都人が高い山を目指す際には練習として、よく愛宕山で足試しをします。また、冬にはアイゼンを着けて雪上歩行の練習をするためにも登られています。
京都の人に「京都で一番高い山は?」と尋ねると愛宕山と答える人が多いことでしょう。実は愛宕山は標高924mで、本当の京都府最高峰は滋賀県との県境にある皆子山(971.5m)なのですが、山に興味がない人にはほとんど知られていません。皆子山のお話はまた別の機会に書きたいと思います。
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