炭水化物ってなに?

昔のグリコのコマーシャルで「一粒300メートル」というのがありました。グリコのホームページには「キャラメル一粒には16.5kcalのエネルギーがあり、年齢20歳の男性が分速160m で走ると、1分間に使うエネルギーは 8.71 kcal になり、 一粒で1.89分、約300m走れる」と書かれています。

Wikipediaより引用

このキャラメルの栄養成分表示を見ると、一粒あたりたんぱく質 0.13g、脂質0.4g、炭水化物3.1gで、エネルギーの大半が炭水化物です。たんぱく質、脂質、炭水化物の3種の栄養素をまとめて三大栄養素と呼びますが、その中でも炭水化物はヒトが活動するときのエネルギー源として最も重要な物です。

栄養学的には炭水化物は糖質と食物繊維の総称で、ヒトが消化できずエネルギー源にはなりにくい食物繊維を除いたものを糖質と呼んでいます。三大栄養素のひとつとして炭水化物というときには、主に糖質を指します。

糖の基本形はブドウ糖(グルコース)

糖の最も基本的な形であるブドウ糖(αグルコース)の分子は下図左の様な構造をしています。Cは炭素、Hは水素、Oは酸素で、ブドウ糖分子1個の中にはCが6個、Hが12個、Oが6個あるのでC6H12O6と書き表されます。H12O6の部分を(H2O)×6と見ると、C6H12O6は炭素原子6個と水(H2O)分子6個が結びついたものと考えることが出来るのが、炭水化物という名前の由来です。

栄養源として摂る糖質には、糖の分子1個で出来ているブドウ糖や果糖のほかに、これらが2個つながった二糖類、鎖の様に多数つながった多糖類(デンプンなど)があり、調味料として使われる砂糖(ショ糖)は二糖類の一種で、ブドウ糖と果糖が繋がったものです。糖質はまず消化酵素によって単糖類まで分解されてから小腸で吸収されますが、ブドウ糖は分解する必要がないので、速く吸収されて速く血糖値が上がります。

ちなみに、ご飯などに含まれるデンプンには甘味がありませんが、唾液中のアミラーゼで分解されて麦芽糖、ブドウ糖へと分解されると甘味を感じるようになります。ご飯をよく噛むと甘く感じられる様になるのはこのためです。

食物繊維と腸内細菌

地球上に最も多く存在する炭水化物は、植物の細胞壁や繊維の主成分であるセルロースです。ヒトが栄養素として利用しているαグルコースとは少し構造が違うβグルコース(上の図の右側、赤の部分が違う)が多数つながったもので、これだけの違いで哺乳類や昆虫など大半の生き物が持つ消化酵素では消化できなくなります。

草食動物は消化管内(ウマは大腸、ウシは4つの胃)にセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)をもった腸内細菌を大量に住まわせていて、その力を借りてセルロースを消化して栄養として利用しています。ウサギなどは腸が短い分腸内細菌も少ないですが、未消化の食物繊維を多く含む自分の便を食べて、何度も腸を通過させることによって消化しています。

少し前に日本人は特有の腸内細菌を持っているという話がニュースになりました。日本人のもつ腸内細菌が、昔からの食生活(海苔などの海藻類を生で食べていた)を通じて海洋性微生物が持つ分解酵素の遺伝子を取り込んだと考えられており、日本人はこの腸内細菌(バクテロイデス・プレビウス)の力を借りて、欧米人が消化できない海藻の多糖類を消化できるそうです。(下の画像をクリックするとnatureの論文のページに移動)

血液の中の糖はごく僅か

ヒトが必要とするエネルギーは体重と活動量によって違いますが、体重70㎏とすると安静にしていても一日で約1700~1800kcalが必要です。このうち脳と肝臓と筋肉がそれぞれ20%あまり、心臓と腎臓が10%弱消費しており、特に脳はそのほぼ全てをブドウ糖で得ています。このエネルギーの半分を糖で賄うとすると900kcal、ブドウ糖225gが必要で、そのうち100g以上は脳が消費することになります。ヒトの脳が大量の糖によるエネルギーを必要とすることがよくわかりますね。

細胞はエネルギー源として必要なブドウ糖を血液から得ているのですが、血液の中にはどれだけのブドウ糖があるのでしょうか。体重70㎏のヒトで体の60%が水分とすると、全水分量が42L(リットル)、そのうち細胞外液は14L、さらに血管の中にある水分(血漿)は2.8L、血管の外にある水分(間質液)は11.2Lです。血糖値が100mg/dL(デシリットル)とすると、血管の中のブドウ糖の全量は2.8gで、グリコキャラメル1個分より少ないのです。

これではあっと言う間にブドウ糖が底をついてしまうので、常に血液にブドウ糖を補給し続ける必要がありますが、補給量が多すぎると高血糖になり、少なすぎると低血糖になります。

高血糖が慢性的に続くと、ブドウ糖が血管の壁を傷つけたり、体の組織中のたんぱく質などに結合して劣化させたりして、徐々に体を蝕みます。これが糖尿病です。逆に低血糖になると、体の細胞がエネルギー不足に陥ります。筋肉細胞は脂肪などもエネルギー源として利用できますが、脳細胞はそれができないので、低血糖は脳にとって緊急事態です。血糖が下がると最初は空腹感とともに冷汗や手の震えなどの症状が現れ、さらに悪化すると脳の働きに支障が出て、最後は意識がなくなります。

だから、人体には血糖を上げて低血糖を避ける仕組みがいっぱい備わっています。また、糖が下がった時に最初に出てくる冷汗や手の震えなどの症状は交感神経が刺激されてアドレナリンが増えている現れで、身体が危険を感じて血糖を回復させようとしている、いわば注意信号でもあるのです。

それに対して体の中で血糖を下げようとするは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンだけしかないので、インスリンの働きが不足すると糖尿病になってしまいます。

ブドウ糖を蓄えるグリコーゲン

食事で糖を摂った時にすぐに使われなかったブドウ糖は、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられ、空腹時に利用されます。グリコーゲンは、肝臓に約100g、筋肉に約300gで合計1600kcal蓄えられます。肝臓のグリコーゲンはブドウ糖として血液中に放出して、他の臓器に供給されますが、筋肉のグリコーゲンは筋肉細胞の中だけで消費されます。筋肉はブドウ糖のエネルギーだけで足りない場合は、脂肪を分解した遊離脂肪酸などもエネルギー源として使うことも出来ます。

運動で筋肉を鍛えておくと、筋肉に蓄えられるグリコーゲンを増やすことが出来ます。また、マラソンなど長時間の運動をする場合は、数日前から炭水化物を多めに摂って身体にグリコーゲンを貯める、カーボローディングを行うことで、持久力がアップします。

筋肉で脂肪を燃やすには

さて、多くの方が興味あるのは、筋肉で糖よりも脂肪を燃やす方法でしょう。そのためには運動が大切ですが、どんな運動をすれば良いのでしょうか。最新の考え方が厚生労働省から発表されています。(以下は抜粋)

運動強度について、以前は高強度の運動は長く続けられないので脂肪燃焼に適さないとの意見もありましたが、最近では強い運動を短時間行っても、脂肪燃焼効果は十分あると考えられています。

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