免疫とワクチンのはなし(1)

新型コロナウイルス感染との戦いが続いていますが、コロナ禍で「免疫」という言葉を以前より意識する機会が増えました。免疫には生まれながらに持っている自然免疫と、病原体に触れることによって身に着けていく獲得免疫があります。詳しくはワクチンの話題の中で解説していますので、ご覧ください。

タイトル画像は本文とは関係ありませんが、免疫の力で早く安心な賑わいが戻ってほしいと願って選びました。

終生免疫

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)には一度かかったら二度とかからりません。これは一度かかると強固な獲得免疫ができてその免疫がほぼ一生の間続くからで、このような免疫を終生免疫と呼びます。流行性耳下腺炎以外にも水疱(みずぼうそう)や風疹(三日ばしか)、麻疹(はしか)、天然痘(ほうそう)なども一度かかったら二度とかからないほど長期間の免疫が得られます。

ワクチンで撲滅されたウイルス

天然痘は1796年にジェンナーによって始められた痘瘡ワクチン(種痘)が功を奏して、1977年にソマリアで発生した患者を最後に地上から消え、1980年にはWHOによって種痘撲滅宣言が出されました。日本ではそれより先に感染の危険がなくなったとして、1976年を最後に種痘の定期接種が廃止されました。その後は天然痘に対する免疫を持たない若い人が増えていますが、社会にウイルスがいないため病気の発症はありません。

ワクチン後進国、日本

その他にもワクチンで防げる病気は多くあり世界中で接種が推奨されていますが、日本はワクチンの副反応(副作用)に対する過剰な不安やバッシングによってワクチン後進国となってしまいました。ワクチンによる副反応はもちろん防ぎたいですが、ワクチンを受けなかったために感染して後遺症で苦しんでいる人が、ワクチンで起こりえる健康被害よりもはるかに多いのが現実です。そればかりでなく、ワクチン後進国日本は麻疹などの感染症の輸出国として、国際的な非難もあびました。この様な事態を受けて、ここ数年各種ワクチンの接種が日本国内でも積極的に行われるようになってきました。

水痘(みずぼうそう)と帯状疱疹

大人の方は、多くの方が子供の時に水痘(みずぼうそう)に罹ったことがあると思います。子供の時に水痘に罹っても通常は重症化せずに治りますが、実は治った後もウイルスは完全に居なくなったわけではなく、体の奥の神経根という場所にひっそりと残っています。普段このウイルスは静かに眠っているだけで悪さはしないのですが、高齢になったり体力が落ちたりして免疫力が低下すると暴れだして、眠っていた神経根の部分から神経に沿って帯状に疱疹を作り、神経痛を引き起こします。これが帯状疱疹(帯状ヘルペス)です。

水痘もワクチンで予防できる疾患で、2014年から定期接種が開始されました。ワクチンで感染を予防すると、その後の帯状疱疹も防げると考えられています。この水痘ワクチンの定期接種開始後に、興味深い現象がおこりました。元々高齢者に多かった帯状疱疹が、20歳~49歳の年代で急増したのです。(国立感染症研究所より)

免疫のブースター効果

あるウイルスに対して免疫ができても時間の経過とともに免疫が低下しますが、再びウイルスに感染すると、低下し始めた免疫が刺激を受けて再び上昇します。これを免疫のブースター効果と呼びます。強い免疫が長期間続くためには、このブースター効果も大きな役割を担っていることがわかっています。

水痘ワクチン接種が広まる前は、社会に水痘ウイルスが蔓延していたため時々ウイルスに触れて、ブースター効果を得る機会があったのが、ワクチン接種によって水痘にかかる子供が減りブースター効果がなくなったため、水痘ウイルスに対する免疫が低下する大人が増えて帯状疱疹を発症しやすくなったと考えられています。ブースター効果がなくなって免疫が低下しても免疫が完全になくなるわけではなく、日本では二度目の水痘にかかることは通常はありません。

変異株と再感染

しかし世界中には水痘ウイルスの変異株が多く存在していて、免疫を持っていても変異株に出会うと水痘を再発症することがあります。島国の日本では今まで「岡株」と呼ばれる1種類だけしかなかったため、「水痘には二度とかからない」が常識ですが、海外では「二度目の水痘」も珍しくはないそうです。ただし変異株で再感染を起こした場合は、軽症で済みます。現在世界中で使われている水痘ワクチンは日本の岡株由来のもので、他の株による感染を完全に防ぐことはできません。このため日本以外ではワクチン接種後に水痘にかかることも珍しくないけれど、再感染と同様軽症で済むので岡株のワクチンだけで困らないのだそうです。

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